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  • Writer's picture笹本潤

トルコ弁護士の死

トルコの弁護士が20人裁判にかけられ、最長18年の懲役の有罪判決の末、刑務所に収監されている。私の知り合いの弁護士もそのうち何人かいる。エルドアン大統領は、2016年のクーデター未遂事件以降反政府勢力に対する弾圧を強め、政府に対抗するテロリスト組織のメンバーに属しているとい理由で多くの弁護士が逮捕されてきた。そのうちの一人の弁護士エブル・ティムティックが、不公正な裁判に抗議してハンガーストライキで断食に入り、約6ヶ月後の2020年8月27日に亡くなった。

2018年に私は裁判傍聴をしにイスタンブールに行った。起訴された20人の弁護士をさらに50人の同僚の弁護士が弁護し、さらにそれらを取り囲むように50人の法廷警察官がいて、法廷の中だけでも100人以上の人間がいる大裁判だった。同僚弁護士に書類を渡しただけで法廷内で警察官から暴力を振るわれるなどを目撃し、起訴された弁護士たちに対して敵意丸出しの裁判だった。裁判の弁論を途中で制限されたこともあるという。


起訴された弁護士たちは依頼者たちの利益を守って仕事をしただけなのに、彼らの思想と同視された。国連の原則では、弁護士の職務により、依頼者や依頼者の信条と同一視されるべきではない、とも定められている(弁護士の役割に関する基本原則18条)。このような論法が通ったら弁護士は誰の弁護もできなくなる。オウム裁判の刑事弁護を引き受けたらオウム信者とされたのと同じ論法だ。

亡くなったエブルは、そのような裁判に抗議して抵抗を続け、死をもって抗議の意志を示したかったのだと思う。とても真似できないが、気持ちはよくわかる。


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